34歳で3億円の資産を築く会社員投資家~キクチさんインタビュー【前編】

  • リアル投資家列伝・ データから読み解く投資のヒント / キクチ

会社員のキクチさん(仮名)は、34歳にしてすでに3億円を越える資産を築いています。一見するとどこにでもいそうなサラリーマンであるキクチさんが、若くして株で成功を収められたのは、徹底した「データ主義」があったようです。

ブルームバーグで大株主として名前が報道

金融関係者のほとんどが見ているニュースメディア「ブルームバーグ」。ブルームバーグにいきなり自分の名前が掲載されることを、あなたは想像できるだろうか?

「ある日、同僚から突然、『ブルームバーグにキクチの名前が載っているよ』と言われ、『はっ!? 何言ってるの?!』と驚きました。思い返してみると、随分昔に母親からブルーハンバーグから電話があったと言われたことを思い出しました。ああ、ブルーハンバーグではなく、ブルームバーグからの電話だったのかと(笑)」

7年前の出来事をそう振り返るキクチさん。

「ある株を買い進めていたら発行済み株式総数の5%を超えてしまった。そのため、法律にのっとり『大量保有報告書』を提出していたんです。それを見た記者が電話をかけてきたようです。そのときはブルーハンバーグなんて心当たりがなかったので、電話をかけ直すことはしませんでしたが」

当時のキクチさんは26歳。20代半ばにして上場企業の5%を超える株を買えるほどの資産を築いていたことになる。当時も今もキクチさんは会社員。取材当日も「ノー残業デー」の貴重な夜に時間を割いてくれた。一体、どうやって資産を築いたのだろうか。

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新聞の株価欄を眺めるのが好きな中学生

「株式投資です。中学生のころから株に興味があって、新聞の株価欄をよく見ていました。『これを買ったら儲かりそうだな、お年玉で買えたらいいのにな』なんて想像するのが楽しかったんです」

今でこそ数万円で買える株は珍しくないが、それはこの10年ほどで売買単位の引き下げが大きく進んだからである。当時はまだ1000株を取引単位にしている銘柄がほとんどだったから、さすがにお年玉では手が届かない。

「資産家の息子でも、親が株をやっていたわけでもありません。株に興味を持ったきっかけははっきり覚えていないのですが、もともと数字やデータが好きで、その延長で株に興味を持ったのだと思います。それと同時に競馬へ関心が向いたのもデータ好きの延長でした。きっかけは小学生のころに見たオグリキャップでした」

1990年頃、活躍していた競走馬が「オグリキャップ」。無類の強さを誇り、競馬ブームを巻き起こしたスターホースだ。

「競馬ではパドックの落ち着きぶりや色ツヤといった感覚的な特徴をもとに予想する人もいます。でも、私が好きだったのはデータ。以前の着順、ダートか芝か、天気はどうだったのか――そんなデータを集めては予想していました」

高校の授業を終えたある金曜日、翌日のレースの情報を知るためにキクチさんは夕刊タブロイド紙を購入した。そこにあった1本の見出しがキクチさんの目を引いた。

「ヤフーの時価総額が1兆円を超えた、そんな見出しだったと思います。すごい世界になっているなと、競馬に向いていた興味がいっきに株へと引き戻され、それからは夕刊紙ではなく『日経会社情報』が愛読書になりました」

『会社四季報』と同じ体裁で、全上場企業の業績や株価といった情報を一冊にまとめたものが『日経会社情報』だ。

「日経会社情報ではトヨタ自動車のような30万人以上が働く超大企業の情報も1ページに凝縮されてしまうし、一冊を通読すればすべての主要企業のあらましがわかってしまう。そのおもしろさが自分にハマりました」

IT企業3銘柄を買った株式投資デビュー戦

ただ、当時のキクチさんはこの会社の株は上がりそうだなと夢想するだけの「エア投資家」。高校を卒業し、大学へ入学。アルバイトで貯めた資金70万円を元手に、投資家デビューを果たしたのは大学2年生のときだった。

「最初に買ったのは、インテリジェンス、サイバーエージェント、EストアーのIT系3銘柄。IT業界について詳しく知っていたわけではないですが、買った理由はPBR(株価純資産倍率)です。たしか、どの銘柄もPBRが0.3倍台くらいだったと記憶しています」

デビュー戦とはいえ、エア投資家歴の長いキクチさん。自分なりの「型」がすでにできていた。

「PBRとともに注目したのが上場時の高値でした。3銘柄はいずれも株式公開直後に高値をつけてから下がっていた。上場時高値という明確なターゲットがあり、資産面から見た割安度が高い。その辺が買った理由だったと思います……。そうやって振り返ってみると、進歩していないですね。今もやっていることは同じですから(笑)」

ITベンチャーへの注目度が高まっていた時期でもあり、キクチさんのデビュー戦は大成功。株価は急上昇。8倍から15倍程度まで上がったところで手放し、大学卒業時には70万円の元手が700万円になったという。

キクチさんの売買には(1)株価の割安度を資産面で測るPBRを重視、(2)上場時に高値をつけてから底ばっている銘柄への着目、(3)数銘柄程度への集中投資といった特徴がある。こうした3つの特徴はデビュー戦から発揮されていたことになる。

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