34歳で3億円の資産を築く会社員投資家~キクチさんインタビュー【後編】

  • リアル投資家列伝・ データから読み解く投資のヒント / キクチ

独自のスタイルを貫いて、34歳にして3億円の資産を築いた兼業投資家のキクチさん。そのスタイルは、会社員ならではのメリットを活かしたものといえそうです。リーマンショックで受けた資産半減の大打撃からどう脱却したのでしょうか。
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経営陣への直訴が功を奏す

当時発行されていた100株を1株に併合する提案だ。1万株持っていた株主なら100株の株主になる、ということ。どんな意図があったのだろうか。

「これが実現すれば、100株未満の株主が持っている株は会社が買い取ることになり、残るのは大株主だけ。株主が少数になれば、買収する側も動きやすくなる。それに1株当たりの買い取り価格を低く抑えられれば、株式併合後の1株当たりの純資産が増加するという目論見でした」

O社はキクチさんの提言を採用、株主総会で株式併合の特別決議が可決され、1株当たり純資産は当初の100倍以上、1200万円に増加した。

「翌年の株主総会には、社会見学も兼ねて行きました。人生で株主総会に出席したのは、この時を含めて2回だけです。株主総会で記念にもらった時計は、箱に入れたまま取ってあります。株主総会に出て経営陣の顔を見て、話を聞いてしまうと情が湧いてしまい、シビアにデータを見られなくなる。だから株主総会にはあえて行かないし、自分がよく利用するお店、好きなブランドなどの銘柄も買いません。会社に惚れてしまったら冷静な判断ができないからです」

株式併合の翌年に黒字転換、その翌年には復配とO社の動きは急展開していく。

「そして2012年、広島県が出資するファンドがO社に対する株式公開買い付け(TOB)を発表しました。買い付け価格は1株200万円。株式併合を考慮しても私の買値の8倍以上でした。金額的にも、心理的にも、会心の一撃といえる取引でした」

大学時代、アルバイトで貯めた70万円が100倍超となった瞬間でもあった。O社の株式の購入時、2000万円弱だったキクチさんの資産は8000万円近くへと急上昇した。

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給料があってこそできる投資スタイル

「上場廃止株ならどれでもいいわけではない。新株を不自然に発行していない、大株主が頻繁に変わっていない、監査法人を変更していない、決算期を変更していないなど、いくつかの項目で、企業としての健全さをチェックしています。逆に、こうした項目に多く当てはまるようだと、危ないなと判断します。もちろん、PBRが割安であることは必須条件です」

他に類を見ない独自のスタイルで、今や3億円を超える資産を築いたキクチさん。そのやり方、諸手を挙げて初心者にオススメできるものでは決してないが、会社員でも無理なくできる投資スタイルだとは言えるだろう。

「焦らず冷静に判断をくだせるのは給料があってこそ、だと思います。自分のスタイルだと、O社のように投資期間が3年に渡ることもある。会社を辞めて専業投資家になれば、日々の生活費を稼がないといけません。そうなれば資産の6割が3年もロックされてしまうことには耐えられないでしょう。兼業投資家だからできるスタイルだと思います」

しかし、キクチさんの資産は3億円。年5%の収益でも1500万円になる。税金を払っても1000万円以上が残るのだから、「会社、辞めようかな」とも思いそうだが。

「今の時間配分は仕事9割、投資が1割。開示情報をチェックするくらいで、取引するのは年に数回だけです。退職すれば日銭を稼ぐために冷静な判断がくだせなくなるかもしれないし、なにより時間が余ってしまいますよね(笑)」

働きながらの株式投資がキクチさんの性に合っているようだ。

「兼業ゆえの面倒なこともありますけどね。困ったのは大量保有報告書の提出です」

発行済み株式総数の5%を超える株数を保有したら、大量保有報告書の提出が義務付けられている。

「何度か大量保有報告書を提出しましたが、最初は焦りましたね。何気なく買い増していた株が5%を超えてしまった。5営業日以内の提出が義務付けられているので、慌てました。提出方法を調べてみると、2回目以降はインターネットでできるのですが、最初は最寄りの財務局に書類を提出しないといけないらしい。慌てて有給休暇を取得し、提出しました」

一方で、株式投資家であることのメリットが業務につながることもあるようだ。

「ひとつはドキュメントを作るとき、ですね。企業のIR情報は日々チェックしているので、どんな表現なら読み手に伝わりやすいか、コツがつかめてきます。それに、どの会社が最近調子がいいか悪いかがわかると、営業先の開拓に役立つ。直接『あの会社 、うちの管理する物件から退去?!』と連絡をもらうより先に、IRのリリースで知ることもあります(笑)」

めざすはサラブレッド(低PBRに限る)の購入

仕事に、投資に、そして何よりも幼子のシングルファザーとして、忙しい日々を送るキクチさん。充分な資産を築いた今、目標はどこに置いているのだろう。

「競馬は今も変わらず好きなんです。だから、目標は競走馬のオーナーになることですね。優秀な血統の馬を、その本来の価値よりも割安に買いたい。だから株と同じで、ほしいのは低PBRなサラブレットです(笑)」

「プロの投資家」ではなく、「プロの兼業投資家」として会社員と投資家の二足のわらじで成功しているキクチさん。その考え方、働きながら投資に取り組む人には見習うべきところが多そうだ。

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