株芸人から億トレへ 〜井村俊哉さんインタビュー【中編】

  • リアル投資家列伝・徹底した企業分析による集中投資スタイル / 井村 俊哉

株式投資を再開したきっかけは「結婚するため」だったと語る、元株芸人の井村俊哉さん。売買ルールを守れず、無茶な取引を繰り返した井村さんですが、それでも投資が成功しつつある背景には、奥さんの内助の功がありました。投資を始めてから井村さんがどんな売買をしていったのか、お話をうかがいました。
株芸人から億トレへ〜井村俊哉さんインタビュー【前編】を読む

難関資格・中小企業診断士を取得

2011年に投資家としての道を歩み始めた井村さんですが、同時にもうひとつの挑戦も始めていた。

「株を始めたのと同じころ、中小企業診断士の勉強を始めました。自己啓発的な意味合いで取る人も多い資格ですが、僕の根底にあったのは嫁さんの親御さんを説得する材料にすること。『今は芸人なんてやっていますけど、本気になりゃ、こういう資格も取れるから安心してくだい!』的な感じで(笑)」

中小企業診断士は合格率4%ほどの難関資格。そんな難関資格を持っていれば、奥さんの両親を説得できる、とのヨミだ。

「午前中は試験の勉強をがっちりやって、午後から相場で稼ぎ、それから買い物、夕食の準備をしながら仕事から帰ってくる嫁さんを待つ、みたいな生活を2年ぐらい続けました。もちろんお笑いのオーディションやライブにも行きました」

2012年、井村さんは2つの目標を果たす。中小企業診断士の取得と、結婚だ。

「結果として結婚したのが9月、試験に合格したのが12月。予定していた順番とは逆でしたが、なんとか目標を達成することができました」

奥さんの500円玉貯金

「いまでもなんでこんな僕と結婚してくれたのかわかりませんよ」

井村さんは、株式投資で成功するまで、自己嫌悪に陥る取引を何度か繰り返したそうだ。

「東日本大震災のとき、地震の直後でも揺れながらマウスを握りしめ収益機会を探っていましたが、引け後に事の重大さに気づきました。嫁さんの実家が福島県なんです。『株なんてやっている場合じゃない、自分はなにをしていたんだ』と」

奥さんの職場があった新宿まで駆け出した井村さん。

「途中で嫁さんと連絡がつき、両親も大丈夫だと。体中の力が一気に抜けましたね」

もうひとつ、忘れられない出来事がある。

「当時は中長期投資だけでなくデイトレードもしていました。経験が浅く、資金管理も激甘でした。ある日、信用取引で買っていた銘柄が暴落し、『追証』(おいしょう)が発生したんです」

追証とは、信用取引で評価損がふくらんだときなどに求められる追加保証金。期日までに追証が入金できないと、保有する銘柄は強制的に決済されることもある。

「自分の資金では追証を支払えず、どうしようかと途方にくれていました。部屋を見渡すと、奥さんが貯めていた500円貯金が……。本当に最低ですが、無断で借りて強制決済を回避。利益にはなりましたが、二度と繰り返さないと心に刻んでいます。今では追証にかかることなんてまずありえません」

2011年に襲った、もうひとつの危機

「運もいいんですよね。不祥事を起こしたある株を買ったときもそうでした。完全に失敗だったので売らないといけないのに売れなくなってしまった。金曜日だったので地獄の週末でした。でもそんなときって、芸にはプラスの影響が出るんですよね。いつも以上にウケるんです。舞台で滑ろうが、『どうせ大損してんだし関係ねぇ!』みたいな気持ちになるので(笑)」

ところが週が明けると上場廃止すら懸念されていた持ち株の株価は急回復、一転してストップ高に。

「奇跡ですよね。あれで資金が一気に2倍くらいになった。2011年はラッキーパンチの連続で資産が2倍、3倍と増えてくれたんです」

100万円ほどで始めた資産は年々、着実に増加していき1000万円の大台にも届いた。

「今はもうやっていないのですが、一時はデイトレードもガンガンやっていました。2016年は1年での累積売買代金が100億円を超えたほどです。デイトレードではルールが大切ですよね」

上がると思って買った株が下がってしまったらいつ損切りするのか、下がったところで買い増すときはどんなルールで行なうのかといった売買ルールをつくり、それが守ることがデイトレーダーの鉄則だ。

「株で食っていこうと決めたときはまだアルバイトをしていましたが、休憩時間などに売買ルールを書いていましたね。今読み返すと恥ずかしいですが」

売買ルールを守るための写真

効果的な売買ルールをつくるのは簡単ではないし、もっと難しいことがある。

「ルールを守るのはとても難しいんです。今は損切りすべきときだ、とわかっていても、マウスをクリックする指が動かなくなる。損切りが遅れたりルールを守れないことで数週間分、数ヵ月分の利益を飛ばしてしまうこともありました」

どうやって売買ルールを徹底させるか――井村さんはモニターの横に1枚の写真を置いた。

「嫁さんの写真です。ルールを破ろうとした瞬間、嫁さんの顔が目に入ると、『あ、やべ』と歯止めをきかせてくれるんです。嫁さんにトレードを監視してもらっているような状態ですね(笑)」