株芸人から億トレへ〜井村俊哉さんインタビュー【後編】

  • リアル投資家列伝・徹底した企業分析による集中投資スタイル / 井村 俊哉

内助の功もあり投資家として成功した井村さんが、今狙うのは「日本でいちばん成長する会社へ投資すること」。有望な投資先を見つけるため、徹底的に企業を研究している井村さんはどんな分析を行なっているのか、その秘訣を教えてくれました。
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企業が保有する株に着目した投資

「株を始めたときは『1000万円になったらいいな』と。それを達成したら『5000万円になったらいいな』と思って達成できて『次は億の単位になったらいいな』と。それも今年、達成できました。ただ、まだ株価次第のところがあって、今日持ち株が急落したので時価ベースだと億を割ってしまった。だから今日はテンション低いですよ(笑)」

最初は「結婚するために」と始めた株式投資だったが、6年間で億の大台を達成した井村さん。

「これはと思う銘柄を見つけたら集中して投資し、思ったとおりに上がったら、『次はこっち、その次はあっち』と乗り換えていく感じでした。そんな中で注目した会社のひとつに『ガイアックス』があります」

名古屋証券取引所のベンチャー企業向け市場に上場する、ソーシャルメディアの運営などを行なう会社だ。

「注目したのはガイアックスの事業自体ではなく投資先でした。ベンチャー企業への投資も行なっていたのですが、そのうちの1社がIPOを迎えそうだったんです。決算書などからIPOが実現したときの時価総額を想定し、ガイアックスが得る投資収益を計算してみると少なくとも数十億円。当時のガイアックスの時価総額からすると相当インパクトがある計算だったんです。これが実現すれば株価は2倍になってもおかしくないだろう、と」

複数の銘柄に資金を分けて投資する「分散投資」が株式投資のセオリー。しかし、井村さんは違った。

「2、3社に資金を突っ込むことが多く、ガイアックスにも2000万円くらい突っ込んだんです。市場が名証セントレックスですから、商いも薄い(出来高が少ない)。リスクもありますが、材料が出たときにはものすごい相場になるとの期待もありました。ただ、このときは売り時を見誤って、結局300万円程度の利益で終わってしまいました」

約3600社でナンバーワンの成長株は

中小企業診断士でもあり、決算書の分析も得意な井村さん。最近はどんなスタイルで投資しているのだろうか。

「何に注目するかは時期によって変わってきたのですが、今はとにかく成長株狙いです。約3600社が上場する市場でナンバーワンの成長株を買いたい。だから決算発表の時期はめっちゃ忙しいです。注目している会社の四半期決算は全部見て、エクセルにデータを入力するので」

成長株投資の魅力は爆発力。井村さんが初期に成功したインフォマートのように投資先が目論見どおりに成長してくれれば、株価は数倍へ値上がりする可能性を秘めている。

「成長力のベンチマーク(指標)にしているのが、日本ならスタートトゥデイ。『ZOZOTOWN』を運営している会社ですし、アメリカだったらフェイスブック。こうした会社は毎年30%、40%と成長しました。これって奇跡的な成長力ですし、スタートトゥデイ以上に成長しろって言われても経営者からしたら『ふざけんな!』って話ですけど、僕はそれに期待したい。そんな会社を探すんです」

井村さんの話にも自然と熱が入り、芸人らしさはゼロ、ベンチャーキャピタリストのような口ぶりになってきた。

成長株の発掘には「売上よりも粗利」

「目安とするのは『粗利が3割以上伸びているかどうか』。ディスカウントしたりすれば売上は多少、お化粧することもできます。だから重視するのは売上よりも粗利。それからビジネスモデルです。労働集約的な業種は外します。売上が拡大すれば、いずれ人の調達が間に合わなくなり成長の限界が来るのも早いと見ているからです。それよりはインターネット系など知識集約的な産業が好みです。あとは外部環境。その会社だけでなく、業界全体が伸びているかどうか、ですね」

そうやって日本の株式市場に上場する約3600社をふるいにかけていく。

「注目している会社は30社くらいですね。今、集中投資しているのは、そのうちの2社なんですが、1つはDSPを主力としている会社です。DSPはDemand-Side Platformの略で、いわばネット広告のオークション。ターゲットとする広告枠のある媒体へユーザーがアプローチしてきたら、超短時間で自動的にオークションが行なわれ、落札した会社のバナーが表示されるんです」

最新のインターネット広告技術であるDSPの実用性と将来性について話し始めたら、止まらなくなってしまった井村さん。投資先に対する熱量はハンパないようだ。だが、後日談となるがすべて売却してしまったという。

「より良いと思う投資先に資金を動かしました、監視銘柄であることには変わりませんが」

ときには機動的に資金をシフトすることも必要だということだろうか。

SNSで投資先の社長から社員までフォロー

「興味がある銘柄があったら、フェイスブックやツイッターで社長をフォローするんです。社長をフォローすると芋づる式に役員から社員までフォローできるし、彼らが自社に関連するニュースをシェアしてくれるから、自然とその会社の技術や業界について詳しくなれます。インターネット系やテック系の会社の社員ならSNSをだいたいやっていますからね。フォローするためのアカウントもたくさんあるんですよ。投資先だけでなく取引先のアカウントまでフォローすることもあるし……僕、気持ち悪いですよね(笑)」

気持ち悪い……けれども、この執着心は研究意欲の裏返しでもあるのだろう。

「こんなやり方だから、時間の制約もあって多くの銘柄には投資できません。マックス3社ですね。今は億を達成できましたが、まだまだ満足はしていません。日本の個人投資家のトップって資産200億円とか300億円規模ですよね。やるからにはそこを目指したいです」