第8回 これまでのまとめと「まじめ」の功罪

8回にわたって続けてきたこの連載も、いよいよ最終回となりました。今回は、これまでお伝えしてきたことをまとめつつ、お金との上手なつきあい方についてあらためて考えてみたいと思います。単なる節約術に留まらない「貯められる自分」になるために何が不足しているのか考えながら読んでいただければ幸いです。
第7回「貯金が少しできたらすぐにやるべき2つのこと」を読む

消費・浪費・投資の黄金比を知る

まず最初、お金には3つの使い方があることをご説明しました。生活に不可欠ではあるものの、生産性はさほど伴わない「消費」。生活に必要でなく、生産性も伴わず、ただ今を楽しむためにお金を使う「浪費」。そして、必ずしも生活に必要なものではないけれど、自分の将来に有効な、生産性の伴うお金の使い方を「投資」と呼びました。貯金ももちろん「投資」の一部です。支出合計を100%としたときの理想的な配分は、消費70%・浪費5%・投資25%。この状態をつくることが「貯められる自分」への第一歩となります。

理想を追うためには、現状の把握が大切。そのために有効な手段が家計簿でした。何度も挫折したという方には、「1ヵ月間、1項目だけ」ではじめてみることをおすすめもしました。まずは1項目でもいいので「あなたの○○費は月いくらですか?」に即答できる状況を作りましょう。

何も考えなくても貯まる「仕組み」を作ろう

家計簿をつけて現状把握をしても、それでも使ってしまうという方に有効なのが、自分の意思と関係なくお金が貯まる仕組みを作ってしまうことでした。給料が入った瞬間に指定した金額が引かれる社内預金や財形貯蓄の利用がそれにあたります。また、家賃や生命保険料をはじめとする固定費をカットすることのインパクトについてもお伝えしました。引っ越しや保険の見直しは億劫(おっくう)だという方、まずはスマホを、格安SIMのものに変えてみましょう。生活への支障は、ほとんどないはずです。

スマホに限らず、「当たり前」をどんどん疑っていきましょう。生命保険は入るもの、家はローンで買うもの、車は所有して当たり前と考えていませんか? 確かにある時代においてはそうだったかもしれませんが、その「当たり前」が現代社会でも変わらないものなのかどうかは、よくよく見極めていく必要があります。例えば車は、カーシェアリングサービスの登場で状況が大きく変わりました。月に数度しか使わない車のために、高い駐車場代や車検費用を払う必要があるのか。浪費であると判断できたなら、どうすればいいかは明白です。

それぞれの「カード」との付き合い方

いろんな「カード」との付き合い方も大切です。クレジットカードは擬似的に未来の自分から借金をするカードだと心得ましょう。代わりに使うべきはデビットカード。クレジットカードの便利さを保ったまま、借金をせず、身の丈にあった買い物ができるデビットカードは、「貯められる自分」の強い味方です。

一見なんのデメリットもなさそうに見える「ポイントカード」にも注意が必要です。「今日はポイントが10倍つくから」と予定になかったものを買い、結果として食材を腐らせたり、服を一度も着ないままタンスの肥やしにしてしまったこと、ありませんか? セールもそうですが、「今日はお得なんだ!」というスイッチが入ったときほど、無駄遣いしやすくなる心理状態はありません。気持ちがはやっているときほど深呼吸して、後悔しないかどうか考えてみましょう。

「まとまったお金」をどう使うか

「貯められる自分」に近づいてくると、だんだんと通帳にあるお金が増えていきます。これまで目にすることのなかった「まとまったお金」はまぶしく尊いものですが、放っておいては文字どおり宝の持ち腐れ。正しく使って、あなただけでなく、お金にも働いてもらうようにしましょうと、比較的手軽な方法を二つ紹介しました。

ひとつは、ふるさと納税です。節税になって返礼品がもらえて、そのうえECサイトなみの手軽さで利用できるこの制度を利用しない手はありません。自分の出身地と関係のない自治体への寄付も可能なので、「今年は何にしようか」と吟味する楽しさもあります。

もうひとつは、確定拠出年金制度です。老後にしか引き出せないものの、そのリスクの低さ、運用の自由度、税制優遇の幅はすばらしく、総合点で他の資産運用方法の追随を許しません。2017年からは「個人型確定拠出年金(iDeCo)」が拡充。専業主婦・専業主夫、公務員なども加入が可能となり、20歳から60歳未満の国民のほぼ全員(※)が利用できる制度となりました。

※企業型確定拠出年金に加入し、勤務先でマッチング拠出が導入されている場合は、iDeCoに加入できない。

これもまた、「使わないと損」な制度と言って過言ではないでしょう。

「まじめ」である自分を疑う

家計がうまくまわらないとわたしの所に相談にいらっしゃる方は、どんな性格の方が多いと思われますか? やっぱり、時間や約束にルーズな方でしょうか? あるいは、なんとかなるさと楽観的な人でしょうか。どちらも確かにいらっしゃいますが、実はいちばん多いのは「まじめで不器用な人」です。

まじめだからこそ世間の常識を疑わないし、不器用だからこそ要領よくコツや知識を学んでくることができなかった。悲しいですが、そんな誠実な人たちが苦しむ社会が出来上がりつつあります。こういった状況をただ悲観しているだけでは、何も解決しません。厳しい言い方になりますが、これまでのあなたがお金を貯められなかったのはあなたに落ち度があったからです。現状を疑わず盲信し、新しい知識を得ようとしなかったからです。

しかし、これからのあなたは違います。この連載を通して学んだことが少しでもあるなら、あとはそれを実践するだけです。もし挫折したとしても、すぐに立ち上がって、また何度でもはじめればいいのです。あなたが「貯められる自分」に生まれ変わり、お金の心配をしない人生を歩まれることを、心から願っております。長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!