バフェット編① 「特権的な強み」を持つ会社を暴落時に買う

今回から8回にわたり「名投資家から投資で成功する秘訣を学ぶ」という趣旨の連載をさせていただくことになりました。私が特に影響を受けた4人を厳選して、その手法の一番大切な部分を分かりやすくお伝えし、さらに、その手法で選んだ具体的な日本株の銘柄もご紹介していこうと思います。

バブルに踊らず自分のスタンスを淡々と貫く

最初に紹介するのはウォーレン・バフェットです。
バフェットはアルバイトで稼いだお金を元手に10代から株式投資を開始し、70年近くもコンスタントに成果を上げ続けて約10兆円近い資産を築きました。資産が1兆円を超えてからは資産増加ペースも年平均約15%とやや緩やかになりましたが、それまでは年率平均約30%のペースで資産を増やし続けました。
年30%のペースだと、10年で14倍、20年で約190倍、30年で約2620倍になる計算です。100万円の元手が30年で26億円、60年で6.9兆円もの資産になります。

良い相場の時には年率30%どころか資産を何倍にも増やす投資家が続出します。たとえば、2000年前後に起きたITバブルでは短期間で資産を何倍、何十倍としたIT株長者が続出しました。

こうした中でもバフェットは「インターネット株は自分には理解できないから買わない」と自分のスタンスを崩さず、一時的に平均株価にも負ける成績となりました。この時は「バフェットの時代は終わった」と言われました。しかし、ITバブルは短期間で崩壊し、多くの人が資産を失いました。そんな中でもバフェットはいつもと変わらないペースで淡々と資産を増やし続けていきました。

バフェットのすごさは安定した成績を長期にわたり継続していることです。短期的に見ると驚くような成績でなくても、安定した成績を長期間続けることで驚くような成果になっていくのです。

年率30%といわず年率10%でも30年継続すると17倍になります。このような効果を「複利効果」といいます。バフェットは若い時からこの複利効果を意識し、どんな相場変動にも惑わされず、あくまでも自分のスタンスを守り、安定した成果を継続してあげていくことが可能になったのです。

「特権的強み」を持ち、「わかりやすい会社」を選ぶ

では、バフェットが守り続けた投資スタンスとはどんなものでしょうか。
簡単に言うと、「特権的強みを持つ会社の株が、超割安になった時に買う」ということに尽きます。

特権的な強みというのは他社がどんなに頑張っても真似できない特権ともいえる強みです。それはライバル企業からの挑戦を跳ねのけて会社の収益を守る壁ともいえるものであり、一般的には「参入障壁」と呼ばれます。
そうした高い参入障壁=特権的強みによって、最低でも10年以上は安定して成長し続けられるような会社の株がバフェットの投資対象となります。

バフェットが投資で成功した代表例であるコカ・コーラ、アメックス、ウォルト・ディズニーを例に考えてみましょう。

コカ・コーラは独特なさわやかな風味で世界中に愛飲者をたくさん抱える定番商品「コカ・コーラ」を持つことが強みです。そのレシピは同社が厳重に管理していて、他社が真似できません。類似商品はありますが、ペプシコーラ以外に有力なライバルはいません。ファストフードなどの飲食店の多くではメニューにコカ・コーラを入れていますので、世界中で飲食店が増えるたびにコカ・コーラの需要が増えていきます。そうしたことに目を付けて、バフェットはまだ割安だったコカ・コーラ株に大量投資して大成功しました。

アメックスはクレジットカードの世界的大手です。クレジットカード会社は世界中に莫大な利用者と契約店網を抱えて世界の決済インフラとしての地位を確立していることが必要であり、新規参入が極めて難しい分野です。世界でも数社の寡占状態であり、インターネットショッピングを含めて世界中で買い物が増えるにしたがって同社の業績拡大も続いています。

ウォルト・ディズニーは世界中から愛されるキャラクターを多数抱えていて、ディズニーランド、映画、アニメ、グッズなどへの需要は世界経済の成長とともに増え続けています。ディズニーのキャラクターをファンに提供できるのは同社だけであり、やはり特権的な強みを持っているといえます。

以上のように、バフェットが投資する会社は特権的強みを持っているだけでなくて、とてもわかりやすくて安定感がある、という点が特徴です。

暴落した時に買う

バフェットの投資法でもう一つ重要なことは、「超割安な株価で買う」ということです。株の割安さを判断するのにバフェットは少し専門的な計算方法を使いますが、個人投資家としては「PER」という簡単な指標を使えばいいでしょう。バフェットの投資法で大切なことは「超割安な水準で買う」ということなので、その点が守られれば問題はないでしょう。

PERは1株益に対する株価の倍率で「株価÷1株益」で計算されます。1株益は1株あたりの純利益であり、会社四季報などのデータで確認することができます。
PERは通常は今期予想の1株益で計算します。そして、一般的には15倍程度が平均的な水準で、10倍以下なら割安、20倍以上なら割高と考えられます。

しかし、1株益の増加が見込める会社の場合は企業価値にプレミアが付きます。とくに、特権的といえるような強みを持つ優良企業の株価は平均的な水準の2倍程度の評価になることが多く、実際のPERも20倍を上回っていることが多いです。

それでも、株式市場が暴落する時などはそうした企業の株もPER10倍台に落ちることがあり、バフェットはそういうチャンスを逃さずに買っています。そうした企業の場合PER15倍なら十分に割安といえると思いますし、場合によっては20倍くらいでも割安といえます。

バフェットのこれまでの投資を見ると、PER15倍前後かそれ以下で買うことが多いようです。よほど気に入った株はそれ以上のPERで買うこともありますが、PER20倍以上で買うことはあまりないようです。

ということで、バフェットの投資法を簡単にまとめると、「特権的な強みを持っていて、最低10年以上は安定して成長し続けそうな会社を、暴落時などにPER10倍台に下がった時に買う」ということができます。かなりシンプルな考え方であり、「たったこれだけ?」と思う人もいるでしょう。

しかし、バフェットはこうした投資のコツについて「あまりに簡単すぎて大学では教えてない」と言います。「大学は権威を保つために役に立たない難しい投資理論を教えている。真実はもっとシンプルなのに」というのがバフェットの主張です。

では、このバフェットのノウハウを具体的に日本株で当てはめるとどんな銘柄が該当するのか、次回探ってみたいと思います。

■ウォーレン・バフェット
1930年生まれ。アルバイトで作った資金からスタートして1代で約9兆円もの個人資産を築いた史上最強と言われる投資家。筆頭株主でありCEOも務めるバークシャー・ハサウェイ社を通じてさまざまな投資や買収を行っている。87歳になった今でも第一線で活躍する投資家で、その一挙手一投足に世界の金融関係者が注目している。