第4回 キャッシュフローから見えてくる意外な事実

前回まで、決算スライドの「業績サマリー」「販管費の内訳」から、スタートトゥデイの特徴や成長率を見てきました。今回は、決算スライドを読むうえで知っておくと便利な「バランスシート」「キャッシュフロー」「自己資本利益率」の見方を簡単に説明していきます。
第3回「販管費の謎が示す将来の布石」を読む

IT企業のバランスシートは大きな変化がなければ読み飛ばしていい

まず、バランスシートをチェックします。バランスシートというのは、貸借対照表とも呼ばれ、企業の決算期など、ある時点での資産状況を表すシートです。全財産がどれくらいあるのか、返さないといけないお金はいくらかなど、その企業の財政状況がひとめでわかります。

バランスシートでは、前期と今期の数字を比べてみて、よほど大きな変化があれば、何があったのか、原因を調べてみます。ただ、IT関連であれば、バランスシートの数字が大きく変わることは少ないため、飛ばしてしまうことも多いです。

今回、例に出している2017年度の資料では大きな変化はないのですが、変化があったときのために、以前の資料を見ながら考えてみましょう。

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こちらは2016年3月期Q3の決算スライドです。このバランスシートを見ると、「流動資産」[※]の数字に大きな変化があります。

※短期間で現金化、費用化ができるもの。現金、預金、有価証券、商品など。

前期は248億円だったのが、393億円へと急増しています。流動資産の下に掲載された現預金や商品は横ばいなので、それ以外の流動資産が増加したことになります。こうした変化があれば、原因を探る必要があります。

このときに何が起きたかというと、「ツケ払い」の開始です。前回でも触れましたが、「ZOZOTOWNで買い物をして商品を受け取っても支払いは2ヵ月後でOK」という制度です。このツケ払いが始まったのは2016年11月。ツケ払いの数字が反映されて初の決算となるQ3のバランスシートでは売掛金[※]がガンと増えため、流動資産の数字が50%以上も増えることになりました。

※あとでお金を受け取れる権利。

キャッシュフローでお金の流れをチェック

バランスシートに大きな変化がある場合の具体例がわかったところで、2017年度の資料に戻って、次は「キャッシュフロー」をチェックします。キャッシュフローとはお金の流れのことで、キャッシュフロー計算書を見れば、会社のお金の流れとどのくらいの現金があるかがわかります。

ここでは項目ごとの増減をざっと見て、大きな変化がないかを確認します。

まずは本業でのお金の出入りを示す「営業活動によるキャッシュフロー」ですが、前四半期よりも減っていますが、法人税の支払いが要因として書かれているので信じることにします。

気になるのは「投資活動によるキャッシュフロー」です。前四半期は3億円弱のマイナスだったのが、19億円のマイナスへと大幅に増えています(事業への投資は、会社としてはお金が減る行為なので、投資すればするほどマイナスになります)。

このスライドは親切で、増減要因が書かれているのですが、一番上には「物流施設を新設して敷金を払いました」とあります。売上も伸びているわけで、これは理解できますね。
その下には「PBプロダクトに係る設備投資」「海外子会社設立の為の出資」とあります。これはなにかというと、前回、販管費の内訳を見たときに明らかにしましたが、将来のZOZOSUITへ向けての投資ですね。

3億円弱のマイナスから19億円のマイナスという、一瞬驚いてしまうような大きな変化であっても、このように理由がわかっていれば、必要な投資だということが判断できます。

現金はどれくらいある?

次に、会社がどのくらいの現金(キャッシュ)を持っているのかを確認します。いくら売上が高くても、会社にキャッシュがないと倒産することもありえますので、必ずチェックしましょう。

スタートトゥデイの場合、「現金及び現金同等物の期末残高」の項目を見ると、212億円の現金があると書かれています。

一見、大きな金額ですが、僕からすると「212億円しかない」という感覚です。何を基準に「しか」と考えたかというと、業績サマリー(4P)に記載されていた販管費です。

6月から9月の間に136億円の販管費が発生し、キャッシュが出ていっているわけです。それに対して、手元にある現金が212億円。

これについてどう考えるのかは、家計で考えるとわかりやすくなります。年収が800万円の家庭があって、生活費は4ヵ月で136万円、ひと月になおすと34万円。そして、貯金が200万円強。これはちょっと少ない気がしませんか? 病気や事故などで収入が滞ったら、半年で貯金がマイナスになります。

この現金の量から推測できること

もちろんスタートトゥデイは黒字会社ですし、営業利益率も高い。いきなり売上がゼロになることは考えにくいですが、ある日突然、大地震などで物流倉庫がすべて破壊されたり、不祥事が起きて売上が急減したりするリスクはゼロではありません。もしそうなったとき、同じペースで販管費を使っていたら、手元にある現金は半年も持たずに枯渇してしまいます。僕のように保守的な感覚だと、これは「超怖い」レベルのタイトな資金繰りだなと思ってしまいます。

「もっとキャッシュを厚くしましょう」とスタートトゥデイのCFOが提案し、前澤友作社長が「いやいや、大丈夫だ」と、そんなやり取りがあったのかもしれませんし、銀行からのクレジットライン(与信枠)[※]を引いてあるから大丈夫だと考えているのかもしれません。

※金融機関が取引先に設定する貸出最高限度額。その限度金額以内であれば、希望する額の融資を受けることができる。

それに、キャッシュが少ないから一概に悪いというわけではありません。お金を超効率よく事業の成長のために使っているという面もあるからです。ただし、スタートトゥデイのように手元に212億円しかないと、現金による大規模な他企業の買収(M&A)は難しそうだということは推測できます。

最後に、「ROE」(自己資本利益率)を見ておきます。ROEとは、企業が資本をどれだけ有効的に利用し、利益につなげているかを判断するための指標です。

私は高ROEのことが多いIT企業を中心に見ているので、ざっとしか見ないことが多いです。スタートトゥデイのROEは61.4%ですが、上場企業の平均は10%もないくらいですので、これは異常なほどに高いROEと言えます。

さて、次回はZOZOTOWNの利用者の傾向を見ながら、いまもっとも注目されている「ZOZOSUIT」の未来を読み解いていきましょう。

<今回のまとめ>
●バランスシートの数字が前期と比べて大きく変わっている場合は、原因を調べてみる
●キャッシュフロー計算書を見て、お金の流れと現金を必ずチェックする
●現金が少ない企業は、現金による大規模な他企業の買収(M&A)は難しいということが推測できる
本記事は決算書類の読み方を解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。
次回は4/23(月)配信予定です。