ファッションショーというビジネスモデル【前編】

人類が誕生してから今日まで、人はなにかしらの服、または服に近いものを身につけて、生活し続けてきました。この身を隠す、着飾る「服」を「ファッション」という形で、人類は文化的に進化させてきました。しかし、この「ファッション」というものは、文化的なだけでなく、ビジネス的な側面もあったからこそ、ここまで成長を遂げ、今も投資をする人たちが後を絶たないのだと思います。

そこでこの連載では、ファッションをデザイナーの作った「流行」「クリエーション」という面からだけでなく、「経済」の視点からもとらえていきます。ファッションを経済の視点から見たときに、世界はどう違って見えてくるのか? ということをお伝えします。

ファッションショーのはじまり

世界では、ビジネス的に大きなファッションショーがパリ、ロンドン、ミラノ、ニューヨークで開催されています。「春夏」と「秋冬」のシーズン、そしてメンズ、ウィメンズの新作アイテムを、コレクション(展示会)にてファッションショーの形式で年に4回発表しています。

歴史を語るのは難しいですが、20世紀初頭からパリでは行われていました。そもそもはオートクチュール(オーダーメイド)のショーが始まりで、階級社会の上層のみを招待し、開催されていました。現在主流のプレタポルテ(既製服)のショーが中心になったのは、1970年代頃から。

この「ファッションショー」。よくできたビジネスモデルです。開催都市に、年に4回、世界各国のファッション媒体の編集長やライター、カメラマンなどのメディア関係者、買い付け目的のバイヤー、トレンドを勉強するために参加するスタイリスト、ブランドの顧客、芸能人、政治家が招待されます。ファッションショーはだいたい1週間ほど行われ、パリでは、パリ・クチュール組合(通称サンディカ)という協会が公式スケジュールを立て、朝から夜までブランドごとのスケジュールがかぶらないように調整を行っています。ホテル、タクシー、ブティック、航空会社、飲食店、アパレル店……コレクション中は、街に膨大な経済効果がもたらされます。

つまりファッションショーとは、オリンピックやコンベンション、映画祭のような「都市に経済効果をもたらすビジネスモデル」だと思ってもらえれば、わかりやすいと思います。特にフランスの場合、国を挙げての一大イベントです。会期中はTVのニュースでも報道しますから、アパレルに直接関係のない飲食業の人や、小売業の人だってコレクションの話をします。

1億円かけても、ファッションショーをする理由

ファッションブランドは1度のショーに、どのくらいの費用をかけているのでしょうか? 参加国と開催先にもよりますが、日本のブランドがパリで行う場合、1億円前後が平均的な費用だと言われています。スタッフの移動、食費、滞在費、モデルのオーディション、会場の費用、ショーでの演出、照明や舞台など……挙げればキリのない話。

このインターネットの時代に、そこまでして、パリコレクションに参加? もっと効率のいいビジネスモデルがあるのでは? と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、世界中のメディアやバイヤーが一堂に会するのはこの期間だけ。ですから、たとえ1億円の費用を投じても、売り上げとメディア効果を考えると、やむを得ない投資なのです。

ちなみにラグジュアリーブランドだけでなく、とんがったデザインのストリートブランドでさえ、パリでショーを開催しています。なぜならば業界内で力の強いラグジュアリーブランドが、この方式で発表し続けているからです。世界中からの買い付けと影響力を考えると、どんな新興ブランドもこのルールに従わなければ大きなビジネスになりえないのです。
ヨーロッパのブランドであれば、まだ出費はひかえめですが、日本ブランドにとっては、かなり大きな出費をともなうと言えます。

そのラグジュアリーブランドの中には、もともとは、鞄や革小物のみの販売を行っていたブランドがいくつかあります。鞄市場は、アパレル市場のようにメディアが注目するショー形式で発表する機会がありません。そこで、注目度の高いファッションショーに参加することで、メディア露出を増やし、ブランド認知を上げることにつなげているのです。「鞄・革小物」は、アパレルブランドにとって、一番利益率の高い商材。ファッションショーに投資することで認知度を上げれば、多大に利益を生むことができます。

ファッションは、生鮮品?

また、アパレルビジネスは、「生もの」的でもあります。その期間に買い付けてもらえなければ、サンプルは廃棄するのが一般的です。トレンド(流行)がある以上、そのコレクションを次の年に持ち越すことは難しいのです。あくまでファッションショーは、主力メディアと上顧客に向けたものです。そして、常に半年先のコレクションを発表しています。

たとえば、2月や3月には、次の秋冬のコレクションを、6月や9月には、次の春夏のコレクションを開くというスケジュールです。受注会を行い、オーダー数が決定し、制作に入り、仕上げて、納品するまでのスケジュールを逆算すると、発表時期になります。

しかし、2000年代に入って、大きな流れがファション業界に起きました。次回はファッション業界に起きた大きな変化と、SNSがもたらした新たな潮流についてお伝えいたします。

<今回のまとめ>
・ファッションショーは、70年代からあるものの、その役割は、ファッション界だけのビジネスではなく、観光産業も含んだコンベンション・ビジネスになっている
・バッグなどの服飾小物のみのブランドが、ビジネスの拡大・ブランド認知獲得のために、ファッション業界に参入・ショーへの参加をすることで、確実にビジネスを成長させた