ファッションショーというビジネスモデル【後編】

前回は、ファッションの歴史や、なぜファッションブランドが1億円もかけてファッションショーを開催するのかについて見てきました。今回はそんなファッション業界で2000年代に起きた大きな流れについて解説していきたいと思います。
ファッションショーというビジネスモデル【前編】を読む

インターネットの通信速度とファッションショー

2000年代に入ると、インターネットメディアでも、コレクションの画像が即座に見られるようになりました。また、ラグジュアリーブランドもショーの様子をライブ配信をするようになりました。今までファッションが好きでも、会場で見られなかった人たちは、雑誌等に載るまでコレクションを見ることができませんでした。ラグジュアリーブランドがライブ配信を始めた理由として、元々の伝統ある富裕層だけでなく、新興国の富裕層やIT富裕層など、新しい富裕層が誕生したことに対するニーズが挙げられます。

同時に、問題が起こりました。ファストファッションブランドの登場です。とあるブランドが、ブランドの休止を余儀なくされた理由は、インターネットの影響です。通常ラグジュアリーブランドはショーでの発表後、6ヵ月間かけて制作し、店頭に並べるサイクルビジネスを行っています。しかし、メディアを通して世界中に配信されるようになったため、ファストファッションブランドが、そのデザインをコピーし、店頭に2週間で並べることが始まりました。これではファストファッションブランドにコピーしてもらうために、発表しているようなものです。

ラグジュアリーと言われる根拠

ファッション業界は、デザインに特許を取ることがほとんどありません。特許を取る習慣がなかったから、ある意味、適度にコピーし合いながら成長したので、ファッションビジネスが大きくなったという一面もあります。そして、万一、裁判したとしても、勝訴する確率も低いのが現状です。
「この服いいな! ほしい!」と思った消費者からすれば、6ヵ月間も待つ必要がなくなったということです。そのデザインの服がほしいだけで、そのブランドの服がほしいわけでないという、「ブランドとして確立していなかった」ことが浮き彫りになったとケースとも言えます。

事態を重く感じたブランドによっては、「SEE NOW, BUY NOW」という取り組みが始まりました。「メディアへの発表ではなく、顧客への発表を。」ファッションの民主化的な意味合いです。発表するタイミングを、販売時期にずらすことで、コピーされるのを防ぐ。顧客が目にした時に、すぐ買える。セレクトショップへの卸売り販売が中心のブランドには、難しいですが、自社での路面店販売を中心としているブランドにとっては、買い付けてもらう必要がないので、可能ではあります。

ただ、発表時期が遅い分、コレクション期間中にファッション感度の高い人たちにアピールできないので、どうしてもブランド力が劣っているように感じてしまいます。そして、メディア露出も、どうしても減ってしまいます。では、なぜラグジュアリーブランドもファストファッションブランドのように2週間で服を作り、ECでも売らないのか?

一番の理由は、伝統です。伝統的な作り方をしているから6ヵ月間かかる。その理由として、彼らは自社工場を持ち、技術力のある職人さんを多く抱えています。そして職人たちとフェアな契約をしています。価格を下げて、品質を落として制作することは、「ラグジュアリーの否定=自分たちへの否定」にもなります。ECサイトの導入が遅かったのも、店舗での接客体験もふくめた上での、ラグジュアリーブランドだと考えているからでした。

SNSの台頭によるファッションの民主化の加速

そして、2010年代に入り、SNSが台頭します。特にインスタグラムは、ファッション業界との親和性が高く、ファッションウィーク中に、各メディアのアカウントでライブ配信をしたり、速報を投稿したり、大活躍です。

通常、影響力のある雑誌の編集長がショー会場の最前列に招かれます。しかし、ここ最近変化が。デジタルを駆使したコンテンツ提供も主流になった今、編集長はコレクションに参加せず、デジタルネイティブ世代のエディターをコレクションに送り込む雑誌まで出てきました。また、ブランド側も最前列には、アーティストや俳優など著名人を積極的に招待することで、メディア露出を狙います。

そういったセレブリティたちが招待枠として、ここ最近ファッションショーへ多数参加をするために、パパラッチまでショー会場の前にたくさん出没するようになりました。またインスタグラムから登場したインフルエンサー”インスタグラマー”も多数会場に現れるために、ストリートスナップを撮るカメラマンたちも、世界中からやってきます。SNSの登場によって、ストリートスナップ専門のカメラマン人口は増加しました。

ファッション業界は、縮小傾向と言われていますが、ファッションを取り巻く環境は、活性化しています。そして、富裕層向けのビジネスモデルとしてスタートしたファッションショーは、インターネットの登場から大きくビジネスが変化し、SNSの登場である種の民主化が加速し、ビジネスモデルが変化の兆しを見せています。

<今回のまとめ>
・ファッションショーという形式は、メディアの注目度という観点からも、現在も完璧なビジネスモデルと言える
・SNSの台頭によって、インフルエンサーたちがファッションにおいて影響力をもち、階級的な世界から民主的な世界に移行しつつある